荷役運搬作業に適したフォークリフトは、物流になくてはならない車両として、幅広い産業で活用されています。その一方で、フォークリフトに関連する事故件数も多く、2020年には1,989件の事故と、31件の死亡事故が発生しています。[注1]
フォークリフトを安全に使用するためにも、基本的な操作方法や運転ルールをしっかり覚えておくことが大切です。
この記事では、フォークリフトの基本操作と運転ルールを解説します。
フォークリフトの基本操作
フォークリフトに乗って作業を行う際の手順や、基本的な操作方法をご紹介します。
1. 作業前の点検
フォークリフトに乗車する前に、まず作業前の点検を行います。フォークリフトのまわりを一周しながら、オイル漏れや水漏れなどのトラブルが起こっていないか、タイヤや作業装置に異常はないかどうか、順番に確認していきます。
また、フォークリフトのまわりに障害物がないかどうかも合わせてチェックしておきましょう。
2. フォークリフトに乗車する
一通り点検を終えたら、運転席の左側からフォークリフトに乗車します。左手はアシストグリップを、右手はドライバーシートの背当てをそれぞれ持ちます。その状態のまま左足を乗降ステップに掛け、運転席に乗ります。
3. フォークリフトを発進・停止
キーを回してエンジンを掛けたら、リフトレバーを引いてフォークを床面から5cm程度の高さに持ち上げます。次にチルトレバーを引き、マストを後ろに倒します。
フォークリフトは、基本的に左手を使ってハンドルを操作します。左手はハンドルノブを握り、右手は右足のももの上に軽く置いておきましょう。
前進する際は前進レバーを、後退する際は後進レバーをそれぞれ入れてから、サイドブレーキを解除します。進行方向および周辺の安全確認を行ってから、右足でアクセルペダルを踏み、発進します。
停止するときは、右足をアクセルペダルから離し、ブレーキペダルを踏みます。
4. フォークリフトの駐車
フォークリフトを駐車するときは、ブレーキペダルを踏んだ状態のまま、駐車ブレーキレバーを引きます。最後に、前進・後進レバーをニュートラルの状態に戻します。
持ち上げていたフォークは床面のすれすれまで下ろします。このとき、フォークの下面の2/3が設置するよう、やや前傾させます。そのままの状態でフォークを完全に床面に下ろしたら、エンジンを止めてキーを抜きます。
フォークリフトから降りる手順は、2の乗車時の手順と逆になります。
フォークリフトの運転ルール
フォークリフトを運転する際に知っておきたい最低限のルールとマナーを8つご紹介します。
1. フォークリフトを運転できるのは有資格者のみ
1トン以上のフォークリフトを運転できるのは、フォークリフト運転技能講習を修了した有資格者のみに限定されます。
無資格のまま1トン以上のフォークリフトを運転して業務に従事すると、労働安全衛生法第61条違反となり、同法第119条に基づき6月以下の懲役または50万円以下の罰金に処される可能性があるので注意しましょう。[注2]
一方、1トン未満のフォークリフトを運転する場合は、フォークリフト運転特別教育を修了しておく必要があります。いずれの場合も、フォークリフトを運転する際は講習および教育を修了した際に発行される資格証を携帯していなければなりません。
2. 安全な服装で運転する
フォークリフトを運転する際は、ヘルメットや安全靴などの保護具を着用します。特にヘルメットは、持ち上げた荷物が何らかの原因で落下した場合に頭部を保護する役割を果たすため、忘れずに着用しましょう。
作業服は、操作時にレバーなどに引っかからないデザインのものを選択します。
3.フォークリフトの制限速度を遵守する
労働安全衛生規則第151条5項では、最高速度が10km/hを超えるフォークリフトを用いて作業する際、適正な制限速度を定めることを義務づけています。[注3]
制限速度は作業場所の地形や地盤や地盤の状態などに応じて定めますが、10km/h以下とするのが一般的です。作業中はあらかじめ定められた制限速度を遵守して作業にあたりましょう。
4. 前方の視界が悪いときはバック走行で作業する
フォークリフトで運搬する荷物によっては、前方の視界が遮られてしまうことがあります。その場合は前進走行は避け、なるべく後進で作業を行うようにしましょう。
5. 停車したときは逸走防止措置を行う
ブレーキを掛けて完全に停止したように見えても、作業場に傾斜があったり、車両に何らかの衝撃が加わったりすると、意図せずに車両が動いてしまう可能性があります。
フォークリフトを停車したときはレバーをニュートラルに入れた上でパーキングブレーキを掛けるなど、適切な逸走防止措置を行いましょう。長時間運転しない場合は上記の逸走防止措置を行った上で、エンジンを停止させることも大切です。
6. あらかじめ定めた作業計画に基づいて運転する
労働安全衛生規則第151条3項では、フォークリフトを用いて作業する際、以下3つの点に適応した作業計画を定めておくことを義務づけています。[注3]
- 作業場所の広さと地形
- フォークリフトの種類と能力
- 荷物の種類と形状
これらの情報に基づき、フォークリフトの運行経路およびフォークリフトの作業方法を示した作業計画に従い、フォークリフトの運転を行います。作業計画を定めない、あるいは無視してフォークリフトを運転すると、物や人と衝突事故を起こすリスクが高くなる恐れがあります。
7. 作業指揮者を配置する
労働安全衛生規則第151条4項では、労働者が複数で荷役作業を行う際、作業指揮者の配置を義務づけています。[注3]
フォークリフトの運転者は現場に配置された作業指揮者の指示に従い、操作や荷役作業を行う必要があります。
なお、作業指揮者を配置するときは、事前に合図(止まれなど)を決めておくことも同規則第151条8項で定められています。
8. 用途外の使用をしない
フォークリフトの主な用途は荷物の運搬および昇降であり、それ以外の用途への使用は認められていません。フォーク部分などに人を乗せて昇降するなど、本来の用途を外れた使用はやめましょう。
フォークリフトを操作・運転する際の注意点
フォークリフトの運転ルールと合わせて、操作時や運転時に特に気をつけたいことを3つご紹介します。
1. 曲がるときは後部の接触に注意する
フォークリフトは普通自動車とは異なり、後ろのタイヤでかじを取る仕組みになっています。走行中に曲がると車両の後部が外側に大きく振られるので、カーブする際は後部の接触に注意しましょう。
2. マストとヘッドガードの間で作業をしない
フォークリフトにはフロントガラスがないため、身を乗り出すとマストに手が届いてしまいます。
ただし、その状態で作業を行うと、マストとヘッドガードに挟まれてケガをする危険があります。運転席からマストごしに荷物を触るなどの行為をしないよう注意しましょう。
3. 用途外の使用をしない
フォークリフトの本来の用途は荷物の運搬や昇降です。それ以外の用途への使用は認められていません。フォーク部分に人を乗せて昇降するなどの行為は危険であるため、定められた用途を以外の使用はやめましょう。
フォークリフトを運転する際は、基本操作と運転ルールをしっかり確認しよう
フォークリフト運転中の事故は意外と多く、中には死亡事故につながるケースもあります。安全にフォークリフトを使用できるよう、運転前に基本操作と最低限のルールをしっかり確認することが大切です。
あわせて、操作時や運転時に気をつけたいポイントを押さえておくと、フォークリフトを使った作業中に起こり得るリスクを低減できます。
事故が起きる原因を知って意識を高めれば、事故を防ぎやすくなります。
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フォークリフトの事故は怖いから、気をつけるべきポイントを知りたい…。